今回は私、センチュリオン・テネブラエ視点でお送りいたします。

え?いきなりなんだ、ですって?


偶には気分を変えてみるのも悪くないでしょう。

別に最近出番が少なくて、存在を忘れられがちだから無理矢理出番を作ったわけではありませんよ。
あのチーグルより、様のお役に立てるということを今回で皆様に認識していただく為です。







まずは前回からのあらましですね。



エルグレアでリアラ・スパーダ・セネルと合流した様は珠海の塔を調べる為に出発しようとしました。
そこへ、コレットと言う少女が現れました。


彼女は自分もついていく、と言ったのです。


















「え、コレット。どういうこと?」



「あのね、私もについていきたいの。ダメかな?」




今回エルグレアでセネルとスパーダが合流することは様にとっては想定外だったんですけれど…。
これもまた想定外ですね。

コレットを断る理由がありませんから、なんとも言えないでしょう。




「オレは良いけど…、結構遠出するよ?」
「うん、だいじょぶ。ちゃんとミントやイオンには言ってきたから」




既に旅支度も済ませているなんて…もしかして最初からついてくる気だったんでしょうか。
様は女性には優しすぎますからね、自分に向いている親切心を断ることなんて出来ません……って、どこからか
少し黒いオーラが!!!!


誰……って
リアラ!?!?

視線の先には……様とコレット……。



ああ!!様がコレットを起こす際に手を握っている!!!!




「怪我してない?」
「うん、だいじょぶ。私よく転ぶから慣れてるんだ」
「慣れちゃダメだろ。気をつけなきゃ、ね?」
「そだね。ごめんね」
「オレに謝らなくても良いんだよ」




そこ、良い雰囲気にならないでください。
段々とリアラの周りが黒くなっていきますから!!!!

セネルとスパーダも感じ取ったらしいですね。顔色が青いです。


黒いオーラを背負い笑顔のまま、リアラは二人に近づく。


、そろそろ行きましょう?あまり遅くなるとダンジョンでの行動が難しくなるわ」
「そうだな。リフィルやガイにも黙って来ちゃってるし、あまり時間かけないほうがいいか」





ふう、ようやく先に進めますね。

………何故でしょうか、今度は
コレットの方から冷気が来るんですが。

気付かなかったことにしておきましょう。


わたくしセンチュリオンは温度を感じる筈無いですからね。気のせいですよね。
恐ろしい程に鳥肌が立ってるのも気のせいですよね。



































―――エヴァ







「失礼、セイジ教授はいますか?」

「よしてちょうだい。此処では教授ではなくてよ。何か用かしら、ジェイド」



研究員との話を中断させ、リフィルはジェイドに向き直る。
ジェイドは手に持っていた少し古びた薄い冊子をリフィルに手渡す。




「これは?」
「まあ目を通してみてください」



それは子ども向けの絵柄の描かれた、いわゆる絵本だ。
リフィルはページを開き、中身を読み出した。




「“多くの人々が暮らす世界、≪グリムラント≫。その世界を支えている巨大な世界樹、ユグドラシル。

 世界樹はマナを生み出す命の樹と呼ばれていました。”」












―――マナは人々の生活においてかけがえのないもの、いつしかマナを巡る争いは絶えず起こるようになりました。

 大地は枯れ、海は穢れ、終わらない争いに精霊達は嘆き悲しみました。

 世界から精霊の守護が消え、樹は徐々にマナを生み出す事すら困難になってきました。



 そこで世界樹は少しずつ溜めたマナを使い、一人の人間を生み出しました。
 その名は≪ディセンダー≫。

 
 世界樹から生まれたディセンダーには記憶がありません。
 恐れも不安もありません。
 ただ、前だけを見て世界を平和へと導くのです。


 
 その為にまずは小さなお手伝いから始めます。

 ディセンダーは姿を色々変え、世界の為に働きます。
 時には剣士、時には僧侶、時には……


 
 そうしてマナを巡る争いを終結させたディセンダーは世界樹へと還って行きました。

 
 ディセンダーの去った後の世界は、人々の笑顔で満ち溢れていました。
 

 それは何よりも変えがたい財産と言えるでしょう。
 



 

  ―――これは、樹から生まれた一人の少年の物語。

 




















「……これは」

「古くから伝わる伝承は、ほんの小さな御伽噺でした。けれど、実現したからこそこの話が受け継がれていくのです」

「何故…今コレを私に?」



リフィルは薄々感づいているのだろう、表情が物語っている。
それでもジェイドの口から確かな真実を聞かなければ納得出来ないのが研究者の性だ。





「――貴女の身近な人物が、まさにその絵本の主人公のようではないですか?」
「?!……まさか、…が?彼が…“ディセンダー”だというの!?」
「私は“”とは断定していないのですが…、貴女はそう思ったのですね?」



リフィルの手から本が滑り落ちる。
それをジェイドは拾い上げ、一番最後のページを捲る。




「…まあ、真実そうなのですが。これは本人の口から聞いたものです」
「………色々謎が多い子だとは正直思ったわ」




フラリと、その場に立つ力も無くなったのかリフィルは椅子に腰掛けた。
俯いた顔からは表情が見えない。





「けれど…私は無意識に確信してたのかしらね。だって、あの子は本当に真っ直ぐだもの。

 恐れも…不安も無い。それどころか周りまで明るくしていく…」

「彼の周りは自然と人が集まります。救われた人間も少なくない。……けれど、彼が“ディセンダー”だということは」







“マナを巡る争いを終結させたディセンダーは世界樹へと還って行きました。”








「世界が平和になれば…はいなくなってしまう……」










秤に乗った、キミと世界


僕らにどちらかを傾かせることは出来やしない

























「ローバーアイ…きゃっ!…失敗しちゃった」


「コレット!大丈夫か?」
「うんだいじょぶだよ」





様……貴方がお優しい方なのはこのテネブラエ、重々理解しております。


け・れ・ど!!!!






我等の背後の邪気にも気付いてください!!!





先程から、様がコレットを助ける度リアラの機嫌が降下していくのです!

その負の思念に魔物も怯えるほど……お陰でホーリーボトルも使ってないのに我等は敵から避けられています。
我々がいるこの珠海の塔、中の魔物はけして弱いレベルではないのに…リアラの殺気だけで退けているんです!





「な、なあ。そう言えばジェイは一緒じゃないのか?」



重苦しい空気に耐えかねたセネルがそう切り出すと、様はコレットから離れました。
これで少しはマシになりますね。



「あー、うん。ジェイはレディアで別れちゃったんだ。里に情報を報告するからって」
「だったらレディアからはリフィルさんと二人だったのか?」
「ううん、レディアのアドリビトムで一人一緒になった。ガイって言うんだけど」





「ガイ…?…それってガイラルディア・ガラン・ガルディオスか?」




「え?ファミリーネームは聞いてないけど…うん、ガイラルディアで合ってるよ。スパーダ知り合い?」
「…昔ちょっとな」



おや、何やらスパーダの様子がおかしいですね。

そう言えば、この男も結局は何処の出身か判っていません。
様はそう言った事を気にしないお方ですから話題に上がりませんが…。




「…アイツがいんのかよ」


小声で呟いた言葉はどうやら私にしか聞こえなかったようです。



















「うーん…無いなあ」

「やっぱりこの塔は関係ねーんじゃねー?」


行けども行けども、怪しい通路や仕掛けなどは見つかりません。
地図に印も付いていなかったのだから、やはり此処は無関係だろうと思うのが普通です。
しかし、様のディセンダーとしての能力が此処に何かあることを察知しているのでしょう。


「本当に何もないのかしら?」

「まあ見つかりにくいよう隠してあるのかもしれないしな」

「そだね。もうちょっと頑張って捜そう……
わわっ!




床で足を滑らせたコレットが尻餅をついてしまいました。




しかし、その場所が何故かカチリと鳴ったのです。





「「「「カチリ???」」」」



「ほえ?」






数秒して、何処かで何かが動く音が聞こえました。
まるで重い石が引き摺られるような…



我々は急いでその場へ向いました。















「こ、これは……」



我々の目の前にあったのは地下へと続く階段。
しかも、結構長めのようですね。




「この階段の先が…もしかしたら」

「石版のある部屋かもしれないわね……」








様が階段を降りようと、一歩踏み出したその時です。






「ちょっと待て、お前達」